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    シルック着物 染 工場見学

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商品カテゴリ一覧 > ◆おべべや京都研修 > ■シルックの作られている現場








シルック着物 染の工場見学


「シルックってどうやって作ってるの」って、考えることもないでしょう。
こんな伝統技法や、こんな作家さんが・・・なんていう事がそもそもありませんから
詳しく調べる方はあまりいないと思われます。

『ポリエステル着物だから、機械的にプリントされているのかな?』
と考えられるのが もっとも一般的なのではないでしょうか?
もちろん東レシルックの中でも比較的お値打ちな商品の中には、このような「機械捺染」という手法で染められている商品もありますが、 多くの東レシルック、中でも高額と思われる 小紋 や 付下げ は、思いもよらない形で染められていました。


猛暑が続いた8月の初旬、接客担当スタッフ全員で京都の東レシルック染工場を訪問してきました。
(ポリエステルの染色が京都であることが意外に思われる方もあるかもしれませんね)




┃手捺染工場

京都市内でも染工場が多く集まる市内西部の天神川近く、駅前の住宅地にある文山染工場。
染工場独特の染料のにおいの中へ入ってみると、思いのほかの広さに驚かされます。
1つのレーンに縦横に2反分の白生地が張られたレーンですから、およそ奥行が25mもあります。
そのレーンが7本、横に2反並べてあるので、28反の白生地が張られています。




┃絹と変わらぬ作業工程

  スクリーンの型紙を移動させながら何往復もする職人。

  染めたての反物。


1色に付き1枚の型紙を使うので、1色差し色を染めるだけでも25mを7往復します。
それを色数分だけ同じ作業を繰り返すのでやはり大変な作業です。

でも型紙の形は違えど絹の着物の型染めと同じ作業です。
ただ正絹の染料と違い、「分散染料」という水に溶けにくい染料を使うため 水でぼかすということが難しく、ぼかしもできるだけ細かい点を開けて染料を流し込み ぼかしているように見せなくてはなりません。



┃予測と経験に基づく配色


もう1点、「分散染料」は高圧で染料定着させるのですが(正絹だと蒸すという作業)
その際に色によっては染料の色と違う色に変色するため、あらかじめどんな色になるかを想像しながら
配色決めをしていくという作業も必要になります。 (この写真の黒色部分も、青色や黄色に変色するそうです)

それ以外にも 染めあがった生地を釣り上げて、できるだけ染料をしみこませて深みを増す作業など、
ポリエステルでは絹のまねはできないというハンデを克服する工夫がなされています。

しかし生地張りから台の洗浄を含め、1日でできる作業は3回だけです。
シルック着物は、職人さんの手により時間と手間をかけて丁寧に染め上げられていました。




┃蒸工場


次に立ち寄ったのが蒸工場。 生地に色を定着させる工程で、この大きな窯で圧力をかけて染料を定着させ、「分散染料」の色が変わってきます。 その際にも、小紋・付下げ・色無地などによって、染め段ができないような工夫がなされています。


  染料を定着させる為の窯。

  余分な染料を洗い流す水洗工程



┃手染めの工場

ぼかしを入れる手染めの職人。
染料を定着させるヒーター。


最後は手染めの工場、と言うより工房、住宅街の民家の一軒家でその作業は行われていました。
着物の染色工房でよく見かける枠場に白生地をかけて刷毛で染める何気ない作業。
絹とまったく変わらない作業が、東レシルックでも行われているのです。


水に溶けにくい染料を均等にぼかしていくには力の入れ具合も均等でないと斑になってしまいます。
ポリエステルと言えどもそこにも職人技が垣間見えるのと、それを定着させるために 染めたあとにヒーターで定着させます。1反を同じペースで作業しなければなりません。


染料の配合も、一度に多く染めるわけではないのでミリグラム単位での染料の配合データを取って、色違いが出ないような管理がなされています。
ここでは付下げのぼかしや八掛など、手でなければ出しにくい染めの味わいを出す工夫がされています。
話を聞くと その奥深さは、染色というより化学の講義を聴いているような感覚でした。



最後に今回案内してくださった染色関係の担当者から
『今は物がたくさん売れる時代ではないので、できるだけ小ロット多品種で作らなければならないがシルックはそこが難しい。しかしそんなことを言っていたのでは、お客さんの期待に応えることはできない。
私たちは何とか絹に負けないように、様々な知恵を出し合ってここまで来ました。 
とにかくお客さんの声を拾って注文を持ってきてほしい。それにこたえる努力はします』
との熱い言葉を受けてきました。

ポリエステルにしては価格高いといわれる東レシルック。
しかしそこには絹に負けないという思いと、職人の技、工夫が織り込まれていました。